○愛媛県特殊詐欺等撲滅条例

令和3年3月26日

条例第37号

愛媛県特殊詐欺等撲滅条例を次のように公布する。

愛媛県特殊詐欺等撲滅条例

目次

第1章 総則(第1条―第8条)

第2章 被害の防止に関する基本的施策等(第9条―第14条)

第3章 被害の防止のために必要な措置等(第15条―第21条)

第4章 雑則(第22条・第23条)

附則

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、特殊詐欺等の被害が深刻な社会問題となっている現状に鑑み、特殊詐欺等の撲滅を図るため、特殊詐欺等の被害の防止に関し、県、県民、事業者及び青少年の育成に携わるものの責務等を明らかにするとともに、被害の防止に関する基本的施策等及び被害の防止のために必要な措置等を定めることにより、特殊詐欺等の被害の防止に係る気運を醸成し、もって特殊詐欺等の被害から県民を守ることを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において「特殊詐欺等」とは、次に掲げる行為をいう。

(1) 詐欺(刑法(明治40年法律第45号)第246条の罪をいう。)又は電子計算機使用詐欺(同法第246条の2の罪をいう。)に当たる行為のうち、面識のない不特定の者(以下この条において「相手方」という。)を電話、郵便、電子メールその他の通信手段(以下「電話等」という。)を用いて対面することなく欺き、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの

(2) 窃盗(刑法第235条の罪をいう。)に当たる行為のうち、相手方を電話等を用いて対面することなく欺き、相手方の住居その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)に赴いて相手方と接触し、隙を見て財物を窃取するもの

(3) 強盗(刑法第236条の罪をいう。)に当たる行為のうち、相手方を電話等を用いて対面することなく欺き、在宅状況、資産状況、世帯人数その他の状況を確認した上、相手方の住居等に赴き、暴行又は脅迫を用いて財物を強取するもの

(4) 恐喝(刑法第249条の罪をいう。)に当たる行為のうち、相手方を電話等を用いて対面することなく欺き、併せて脅迫を用いて畏怖させ、第1号の方法により、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの

(適用上の注意)

第3条 この条例は、特殊詐欺等の被害の防止を図るためにのみ適用するものであって、いやしくもこれを拡張して解釈し、県民、事業者及びこれらの者が組織する団体(以下「県民等」という。)並びに滞在者の自由と権利を不当に制限するようなことがあってはならない。

(県の責務)

第4条 県は、特殊詐欺等の被害の防止に関する施策を総合的かつ計画的に推進する責務を有する。

(県民の責務)

第5条 県民は、特殊詐欺等の被害の防止に関する知識及び理解を深めるとともに、県が実施する特殊詐欺等の被害の防止に関する施策に協力するよう努めるものとする。

2 県民は、自己又は家族、近隣住民その他の身近な者(以下「家族等」という。)が特殊詐欺等の被害に遭わないようにするため、家族等との間で相互に注意を喚起すること、預貯金の引出用のカード又は預貯金通帳を第三者に渡さないようにすること等日常生活における被害の防止対策に取り組むよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、特殊詐欺等の被害の防止に関する知識及び理解を深めるとともに、その事業活動を行うに際しては、県が実施する特殊詐欺等の被害の防止に関する施策並びに県民、他の事業者及びこれらの者が組織する団体が実施する特殊詐欺等の被害の防止に関する自主的な活動に協力するよう努めるものとする。

2 事業者は、商品等の流通及び役務の提供を行うに際して、特殊詐欺等に利用されないための措置を講ずるよう努めるものとする。

3 事業者は、従業者及びその家族が特殊詐欺等の被害に遭わないようにするため、日常生活における被害の防止対策に取り組むよう呼び掛けるとともに、広報活動及び啓発活動を行うよう努めるものとする。

(青少年の育成に携わるものの責務)

第7条 青少年の育成に携わるものは、青少年及びその家族が特殊詐欺等の被害に遭わないようにするとともに、青少年が特殊詐欺等に加担しないようにするため、青少年に対する指導、助言その他の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

(市町との連携)

第8条 県は、特殊詐欺等の被害の防止に関する施策を推進するに当たっては、市町との連携に努めるものとする。

第2章 被害の防止に関する基本的施策等

(広報及び啓発)

第9条 県は、特殊詐欺等の被害の防止に関する県民等の関心及び理解を深めるために必要な広報活動及び啓発活動を行うものとする。

(県民等の自主的な活動の支援)

第10条 県は、県民等が実施する特殊詐欺等の被害の防止に関する自主的な活動を支援するものとする。

(青少年の育成に携わるものに対する支援)

第11条 県は、第7条の措置が円滑に講じられるよう、青少年の育成に携わるものに対し、必要な情報の提供その他の支援を行うものとする。

(情報の提供)

第12条 県は、必要があると認める場合は、県民等及び市町に対して、特殊詐欺等の発生状況その他の特殊詐欺等の被害の防止に有用な情報を提供するものとする。

(通報等)

第13条 県民は、次の各号のいずれかに該当する場合は、警察官への通報その他の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

(1) 自己又は家族等が特殊詐欺等と疑われる不審な電話、電子メール、郵便物等を受けたとき。

(2) その言動から特殊詐欺等の被害を受け、又は受けるおそれがある者を発見したとき。

2 事業者は、事業活動を行うに際して、その言動から特殊詐欺等の被害を受け、又は受けるおそれがある者を発見したときは、警察官への通報その他の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

3 事業者は、事業活動を行うに際して、特殊詐欺等を行っていると疑われる者を発見したときは、警察官に通報するよう努めるものとする。

(被害者等への支援)

第14条 県は、特殊詐欺等により財産又は心身に被害を受けた者が、その被害から早期に回復できるようにするため、当該被害を受けた者及びその家族が直面している問題について相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の支援を行うものとする。

第3章 被害の防止のために必要な措置等

(建物の貸付け等に係る規制)

第15条 何人も、建物を特殊詐欺等の用に供してはならない。

2 何人も、自己が貸付けをしようとする県内に所在する建物が特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、当該建物を貸し付けてはならない。

(建物の貸付契約に係る措置等)

第16条 建物の貸付けをしようとする者は、当該貸付けに係る契約の締結の前に、当該契約の相手方に対し、当該建物を特殊詐欺等の用に供するものでないことを書面により確認するよう努めるものとする。

2 建物の貸付けをしようとする者は、当該貸付けに係る契約において、次に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。

(1) 当該建物を特殊詐欺等の用に供してはならないこと。

(2) 当該建物が特殊詐欺等の用に供されていることが判明したときは、催告をすることなく当該契約を解除することができること。

3 建物の貸付けをした者が前2項に規定する措置を講じた場合において、当該建物が特殊詐欺等の用に供されていることが判明し、当該行為が当該貸付けに係る契約における信頼関係を損なうときは、当該貸付けをした者は、当該契約を解除し、及び当該建物の明渡しを求めるよう努めるものとする。

(建物の貸付けの代理又は媒介に係る規制等)

第17条 建物の貸付けの代理又は媒介をする者は、当該代理又は媒介に係る建物が特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、当該貸付けに係る契約の代理又は媒介をしてはならない。

2 建物の貸付けの代理又は媒介をする者は、当該貸付けをしようとする者に対し、前条第1項及び第2項に規定する措置を講ずることを助言するよう努めるものとする。

(旅館営業者等の営業に係る規制等)

第18条 旅館業法(昭和23年法律第138号)第2条第1項に規定する旅館業又は住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)第2条第3項に規定する住宅宿泊事業(以下「旅館業等」という。)を営む者(以下「旅館営業者等」という。)は、宿泊しようとする者により旅館業等を営む施設が特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、当該宿泊しようとする者を当該施設に宿泊させてはならない。

2 旅館営業者等は、当該施設が特殊詐欺等の用に供されていることが判明したときは、当該行為を行った宿泊者に対し、当該施設における宿泊のサービスの提供に係る契約の解除を求めるよう努めるものとする。

(個人情報の提供に係る規制)

第19条 何人も、特殊詐欺等の用に供されるおそれがあることを知りながら、個人情報(個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第2条第1項第1号に規定する個人情報のうち、氏名、生年月日、住所、電話番号等又はこれらの組合せであって、特殊詐欺等の用に供されるおそれがあるものに限る。以下同じ。)を第三者に提供してはならない。

(個人データの第三者提供に係る確認等)

第20条 個人情報取扱事業者(個人情報の保護に関する法律第16条第2項に規定する個人情報取扱事業者をいう。以下同じ。)は、個人データ(同条第3項に規定する個人データのうち、氏名、生年月日、住所、電話番号等又はこれらの組合せであって、特殊詐欺等の用に供されるおそれがあるものに限る。以下同じ。)を第三者(同条第2項各号に掲げる者を除く。以下同じ。)に提供するに際し、同法第29条第1項の記録(以下「第三者提供に係る記録」という。)の作成を行う場合は、運転免許証の提示を受ける方法その他の公安委員会規則で定める方法により、氏名又は名称その他の公安委員会規則で定める事項の確認を行わなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。

(1) 第三者について、既にこの項の確認を行っているとき。

(2) 前号に規定する場合のほか、この項の確認を行わないことに合理的な理由があるとき。

2 前項の確認を求められた第三者は、正当な理由なくこれを拒んではならない。

3 第1項の確認を行った個人情報取扱事業者は、第三者提供に係る記録と併せて当該確認に係る記録を保存しなければならない。

(特殊詐欺等への加担防止のために必要な規制)

第21条 何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、特殊詐欺等の用に供する特定の手引書又は当該手引書に係る情報を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を、個人情報等(個人情報及び個人データをいう。以下同じ。)又は当該個人情報等を記録した電磁的記録と共に所持し、又は保管してはならない。

2 何人も、道路、公園、広場、駅、頭、空港、興行場、飲食店その他の公共の場所又は汽車、電車、乗合自動車、船舶その他の公共の乗物において、正当な理由がないのに、身分証明書を偽造したものを携帯してはならない。

3 何人も、特殊詐欺等をするように勧誘し、又は強要してはならない。

第4章 雑則

(財政上の措置)

第22条 県は、特殊詐欺等の被害の防止に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(委任)

第23条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、公安委員会規則で定める。

この条例は、令和3年4月1日から施行する。

(令和3年10月15日条例第55号)

この条例は、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第37号)第50条の規定の施行の日から施行する。

愛媛県特殊詐欺等撲滅条例

令和3年3月26日 条例第37号

(令和4年4月1日施行)

体系情報
第5編 事/第1章
沿革情報
令和3年3月26日 条例第37号
令和3年10月15日 条例第55号